東京近郊から見える北の山
冬に東京近郊で北の空に目を向けると、条件が良い日にはその先に居並ぶ山々を望むことができるかもしれません(これは運次第ですが…)。ただ冬の北の空は、太平洋側に比べて湿度が高く、靄(もや)がかかりやすいため、山々が鮮明に見える日は少ないのが現実です。しかし、強運の持ち主であれば、新潟、長野、福島の山々まで見渡せることもあるでしょう。
もし北や西の山々を目にすることができたなら、日本一の面積を誇る関東平野の広大さを実感できるはずです。ちなみに、筑波山は距離が比較的近いため、冬の季節にははっきりと見えることが多いですよ。
(西の山はこちらから)
じっくり見たい方は「画像だけのページ」を見てください。
この山(榛名山から筑波山まで)の写真をパノラマで見ていただくと…(画像だけのページ)
これをカシミールというソフトで見てみると…(画像だけのページ)
(ちなみに方位角は目安程度に考えてください、方位磁石だと「磁北と真北の問題」で北を指す針より真北は7度ほど東側にズレます、スマホのアプリのコンパスもそれほど精度はよくないようです)
だいたい下記の範囲の山が写っています。

北に見える山 google Earth studio版(動画)1
□両神山(1,723m) 浅間山(2,568m)
この二つの山は北に見えるわけではないのですが、この日は東京からもよく見えていました。両神山は高度のある場所からでないと見えないと思います、全体的な姿は見えないのですが、近くで見ると悪魔が住んでいるような異様な姿をしています。浅間山は距離があるので冬でもかなり天気の良い日でないと見えません、積層火山特有の美しい姿をしており現在も火山活動が継続しており、2009年ころには東京でも火山灰が降ってきました。
東京から両神山の裏側まで(動画)
東京から浅間山の裏側まで(動画)


□四阿山(2,354m) 草津白根山(2,171m) 榛名山(1,449m)
この山は本当に天気が良くなくては見えません、四阿山とかいて「あずまやさん」と読む群馬と長野の県境の山です、この山も火山で的岩という柱状節理の奇岩があり、自然の造形美を見ることができます。そして日本で有名な白根山は2つあり1つが日光白根山でこの写真で見えているのが草津白根山(カシミールではすぐ近くの本白根山)です、現在火山活動が活動中で噴火警戒レベル2となっています、湯釜といわれる不思議な強い酸の火口湖は鮮やかな青緑色で、近くまで近づいてみたいのですがガスが危険すぎて近づけないという恐ろしい場所だったりします。 榛名山は比較的東京に近く雪が積もっていないので黒く見えています、箱根の山と同じカルデラの山で、外輪山の中で一番標高があるのが掃部ヶ岳です。昔の中山道、北国街道は榛名山に向かうように進み、そこから西へ向かい碓氷峠を越えて浅間山の南麓を通るルートでした。
東京から四阿山の裏側まで(動画)
東京から草津白根山の裏側まで(動画)
東京から榛名山の裏側まで(動画)


□苗場山(2,145m) 赤城山(1,827m)
榛名山と赤城山はともにカルデラ型の独特なかたちを見せています、箱根と似ていませんか?榛名山も赤城山も総称であって、たくさんある外輪山のなかで榛名山は掃部ヶ岳、赤城山は黒檜山がその山々の最高点となっています、この二つの山は前橋の方から見ると群馬の奥に向かう門のようでもあります、ちなみに東京の三大水系のひとつ利根川水系はこの榛名山と赤城山の間から流れてきていて、その流れは長い時間のうちに蛇行を繰り返して沼田では河岸段丘がはっきり見て取ることができます。この日はよく晴れて新潟と群馬の県境の山まで見えて苗場山まで見えています、苗場山は新潟県と群馬の県境の山で東京より160kmくらい離れているので冬に運が良ければ見ることができます、この山の向こうはすべて白い世界の新潟です。
東京から苗場山の裏側まで(動画)
東京から赤城山の裏側まで(動画)


□武尊山(2,157m) 皇海山(2,144m)
赤城山の右手からは武尊山(ほたかやま)、皇海山(すかいさん)、そして(日光)白根山を頂点とした山々が見えます、これも火山で形成された山です。武尊山は「ほたかやま」と読みます、群馬の奥にそびえる成層火山です、谷川岳は赤城山に隠れて東京からは見えません、皇海山(すかいさん)は成層火山ですが、お椀をひっくり返したような形の山に見えると思います、富士山とかたちがちがいますよね?僕はてっきり溶岩ドームのような成型かと思ったのですがそうではないようです、群馬(上州)の山は荒々しくも凛々しい姿です。
東京から武尊山の裏側まで(動画)
東京から皇海山の裏側まで(動画)


□日光連山1
日光白根山(2,578m)
赤城山の右手からは(日光)白根山を頂点とした山々が見えます、白根山は北関東以北では最高の標高の山です、山奥にある山なので栃木に住んでいる人でも見たことがない人が多いのですが東京からも見える日があります、これも火山で形成された山で穂先がとがった山です、とてもかっこいい山ですね。この山の群を日光火山群ともいうことが多いです。
東京から日光白根山の裏側まで(動画)
男体山(2,486m)
ほぼ真北に見える男体山は富士山と同じ成層火山で神秘的な姿をしており、日光火山群の中心で女峰山と対をなすようにそびえています、おそらく江戸時代もよく見えていたことでしょう、この山を見ると家康が日光に東照宮を作ったのも分かる気がします、今でも真北より関東一円を見張っているようです(この山は比較的に東京から見えやすくよく問い合わせのメールがくる山です)。真冬なら3日に1日は見えるのではないでしょうか?
東京から男体山の裏側まで(動画)


□日光連山から高原山(1,794m)
ここからは別の日に撮影した写真となります、高原山は釈迦ヶ岳等の火山群の総称です、日光連山と高原山との間には低い谷が見えると思いますが、鬼怒川温泉などはこの谷にありこの山の間から福島の山がときおり姿をのぞかせます、また高原山より産出された黒曜石は日本のかなり広い範囲で発見されていますね。
東京から高原山の裏側まで(動画)


□那須連山(1,915m)
那須岳は那須連山の総称で、現在も場所により有毒な火山ガスを噴き出しており、殺生石などが有名です。この山々は東京から160km以上離れており、本当に天気の澄んでいるときしか見えない山で最高峰は三本槍岳です(茶臼岳に隠れて東京方面からは見えませんが)、スカイツリーはたいした塔でこの日はハッキリと見ることができました、もしかしたらもっと遠くの山まで見える時があるのかもしれません。これより東は筑波山まで山が見えません.
東京から那須連山の裏側まで(動画)


□那須連山と八溝山の間
栃木の山々と八溝山の間は山の見えない部分があり、これが栃木県の平野部で日光街道、奥州街道はここを北上し宇都宮で追分となりました。もちろん現在も東北新幹線、東北本線、東北自動車道など北の地に向かう動脈の地です。鬼怒川はこの間から流れてきて現在では利根川へと流れていきます、本当はこの先に安達太良山が見えるはずなのですが、さすがに200km離れている事と地球が丸い事と、那須町あたりが標高が高い事で展望できません、計算ではスカイツリーで本当に展望がきく日であれば、頂上が見えるはずなのですが私が生きているうちにあるでしょうか?そうすれば少しは智恵子が言った「東京には空がない」との言葉もすこし晴らすことができるような気がします。

□八溝山(1021m) 筑波山 (877m)
左の方に八溝山(やみぞさん)が小さく映っています、これは茨城と福島の県境の山で茨城で一番標高の高い山となります、この向こうは東北の区分となります。筑波山は比較的に東京に近くて見えやすい山です、大きく見えるのですが標高はそれほどでもありません、まわりに大きな山がないのでより存在感がありますね、筑波山は他の北に見える山の中では少ない火山ではなく隆起した山です。昔より江戸の絵に富士山の逆側に描かれることが多く距離も比較的近いため冬であればよく見えて、ケーブルカーでの登れる展望の良い山です。
東京から八溝山の裏側まで(動画)
東京から筑波山の裏側まで(動画)


□ 日本最大の平野に住むという事
東京や埼玉などで育った方には実感が湧かないかもしれませんが、日本は山の多い国で、ほとんどの地域では晴れた日には周囲を見渡せば必ず山が目に入るものです。
しかし、関東平野の中心付近では、特に夏にはほとんど山が見えません。これを当たり前に感じる方もいるかもしれませんが、実は日本では珍しい地域だと思います。
私も田舎にいたころは、外に出れば必ず視界に山が入るのが普通でした。しかし、東京に来てからは、夏以外の季節に高い場所へ行かないと山が見えないことに驚いたものです。それほど広大な関東平野の中心に、東京は位置しているのです。
□ 昔よりも今が一番いい
私が東京に来た頃(もう25年ほど前ですが)、あまり北の山々は見えなかったように感じます。空気の澄んだ冬の日には男体山や筑波山が見えるくらいでしたが、石原都知事がディーゼル車の排気ガス規制を強化した頃から、次第に新潟の山や那須の山などが双眼鏡で見えることが増えてきたように思います。また、東京から富士山が見える日もその頃からかなり多くなったと言われています。特に、真夏に富士山が見えることは25年前には考えられなかったことです(都心の乾燥化が影響しているのかもしれません)。 様々な規制が厳しくなった結果、日本の製造業(ものづくり)は行き詰まったようにも感じますが、悪いことばかりではないのでしょう。もし国が破れても、山や川が美しく保たれるのであれば、それは素晴らしいことかもしれません(ただ、その素晴らしさに気づいている人は少ないように思いますが…)。
□ 北に見える山とは
この北に見える山々は比較的新しい火山帯で、歴史的にも箱根や富士山などとともに、交互に噴火を繰り返し、火山灰をまき散らしてきました。東京の地面を掘れば赤土が出るのもそのためです。現在でも浅間山や草津白根山は噴火警戒中となっており、また新たな関東大震災が明日発生するかもしれません。この地域では備えが必要だと感じています。 ちなみに、「東に見える山」や「南に見える山」は作らないのですか?というメールをいただきましたが、千葉の山は日本で一番標高が低く、東に山はあまり見えません。テーマが山であるため、あまり取り上げていません。ただ、もし時間があれば、作成することも考えてます。(南は房総の山々が見えるんですがね…)
□ 問い合わせ
最近メールでこの山なんでしょうか?という問い合わせが多いです。 だいたいは答えられるのですが、私よりも詳しい方もいらっしゃるでしょう、 掲示板を作りましたので問い合わせ、感想などなんでもお寄せください。
令和2年5月1日
A.hideya