n平均律(nEDO,nTET)について
現在、一般的に演奏されている音楽では、1オクターブが(対数的に)12等分された音程を用いており、この音程体系を12平均律(12EDO、12TET)と呼びます。また、1オクターブを7等分したものを7平均律、10等分したものを10平均律と呼びます。しかし、多くの方は12平均律以外の音楽を耳にしたことがないのではないでしょうか。 一方で、5平均律はインドネシアなどの伝統音楽で使用されることがあり、非常に魅力的で独特な音楽を楽しむことができます。
このように、さまざまな平均律にはそれぞれ特徴があり、特定の音程が響きやすいかどうかで音楽の性質が大きく異なります。たとえば、12平均律では、周波数比が2:3(完全5度)、3:4(完全4度)、4:5(長3度)、5:6(短3度)に近い音程が含まれており、これらの音程がよく響くため、複雑な和音を構成することが可能です。その結果、12平均律の音楽は非常に彩り豊かです。 一方で、11平均律にはこうした響きやすい音程が1つも存在しません。そのため、従来の和音構成や進行は困難ですが、各音が独立して響くため、非常に不思議で独特な音楽を生み出します。これはこれで興味深い特徴と言えるでしょう。
n平均律は、伝統音楽以外では主に欧米の作曲家によってさまざまな形で制作されてきました。特に、12よりも多い平均律(31平均律や53平均律など)を用いる作曲家が多い印象があります。ちなみに私は、7平均律、9平均律、10平均律、11平均律など、12よりも小さい数字の平均律で音楽を作ることが多いので、この分野では少数派かもしれません。なお、12より多い平均律の音楽は「Microtonal Music(微分音楽)」と呼ばれています。この名称は、12平均律と比べて音程を微細(micro)に分けることに由来していますが、12より少ない平均律では音程を大きく分けるため、「Macrotonal Music」と呼ぶ方が適切ではないかと感じています。それでも海外では、12平均律以外のすべての平均律を「Microtonal Music(微分音楽)」として分類するのが一般的です。私の音楽も日本では「微分音楽」、海外では「Microtonal Music」と分類されることが多く、違和感を覚えることがあります。特に日本語では「微分」という言葉が微分計算と結びつくため、余計に混乱を招くように感じます。最近では、この紛らわしさを解消するため、世界的に「Xenharmonic Music」という名称に移行しつつあるようです。
ちなみに、音楽用語には他にも違和感を覚えることが多々あります。特に数字に関する場面では、数学的には基準値は0から始まるべきですが、音楽ではいまだに1から始まることが多く、周波数計算の際に置き換えが必要です。このように、音楽の世界は古い歴史に縛られた部分が多いと感じます。科学のように生活を助けたり、戦争の勝敗に直結するわけではないため、進化が遅いのかもしれません。
それでも、実りが少ないとされる音楽の分野であっても、少しでも現代の音楽の幅を広げることができればと思っています。
令和2年2月2日
☆ ちなみに上記の音程と周波数の関係が分からないと、この平均律の仕組みが分からないと思いますので軽く解説させていただくと、周波数と音階は対数的な関係になっていて、1オクターブ音程が上昇すると周波数は2倍となります、逆に1オクターブ下がると周波数は1/2となります、ということは基準となる音程の周波数がa(Hz)とするとbオクターブ離れた周波数は、a×2のb乗となります、例えばピアノの真ん中のキー"A"の周波数はだいたい440Hzです、これを基準とすると、1オクターブ上の周波数を求めると440×2の1乗は880Hz、1オクターブ下は440×2の(ー1)乗は220Hzとなります、さらに12平均律の音程(基準を0として)cの周波数を求めたければ440×2の(c/12)乗、5平均律であれば440×2の(c/5)乗となります、これは関数電卓、スマホなどで容易に計算することができます、(各平均律のグラフはこちらからどうぞ)さらに現在ではシンセサイザーやサンプラーでセント(1オクターブを1200等分した指数の単位)単位での音程の調節もできるので他の平均律(5平均律や7平均律など)も今では簡単に計算し演奏することができます。